【日本版DBS】スピード違反で罰金払ったのも職場にバレますか?対象となる犯罪の具体的な範囲を解説

2024年6月に成立、2026年12月に施行される「こども性暴力防止法(日本版DBS)」。こども向け施設で働いている従業者のみなさんの心配事は「どの犯罪歴がチェックの対象になるのか」という点ではないでしょうか。

もし自分が保育士だったら、過去の罪がすべて職場の上司にバレるのか、不安でなりません。でも安心してくださいね、日本版BDSで紹介される前科の範囲は性的な犯罪に限ります。制度の導入にあたっては、正しく範囲を理解し、こどもたちの安全とスタッフのプライバシー保護を両立させることが求められます。

本記事では、日本版DBSにおいて照会対象となる「特定性犯罪」の具体的な範囲と、なぜこれらの犯罪が厳しくチェックされるのか、ガイドラインが示す背景を含めて分かりやすく解説します。

目次

法改正で変わった「特定性犯罪」の柱:不同意性交等罪と性的姿態撮影罪

日本版DBSで照会対象となる犯罪の中核は、刑法および特別法で定められた性犯罪です。特に近年の法改正により、その定義はより明確かつ広範囲になっています。

不同意性交等罪・不同意わいせつ罪

2023年の刑法改正により、「強制」から「不同意」へと名称が変わり、処罰範囲が明確化されました。対等な判断が難しいこどもに対する性的な行為は厳しく制限されています。

性的姿態撮影罪(性的姿態撮影等処罰法)

いわゆる「盗撮」や、性的な姿態を撮影する行為、およびその拡散などを罰する新しい法律です。デジタル機器の普及に伴い、こどもが被害に遭うリスクが高まっていることから、チェックの必須項目となっています。

これらの犯罪は、一度でも前科があれば「特定性犯罪」として、制度上の照会対象となります。

都道府県の「迷惑防止条例」も対象に。痴漢やのぞきも前科照会の対象

「刑法犯でなければ大丈夫」という誤解がありますが、実は各都道府県が定める「迷惑防止条例」違反も対象に含まれます。ここが実務上、最も注意すべきポイントです。

痴漢やのぞき、つきまとい:公共の場所での痴漢行為や、更衣室・トイレなどの「のぞき」行為は、多くの自治体で条例により処罰されます。

なぜ条例違反まで含まれるのか:性暴力の加害者は、より重大な犯罪に及ぶ前に、条例違反レベルの行為を繰り返す傾向があることが統計的に示されているためです。

経営者としては、スタッフの過去の「条例違反」もチェックの遡及範囲に含まれる可能性があることを認識し、制度運用(性犯罪歴の確認)の準備を進める必要があります。

照会対象となる特定性犯罪一覧

刑法に関する罪

以下の条文に規定される罪(未遂罪を含む)が対象です。

  • 不同意わいせつ罪(第176条)
  • 不同意性交等罪(第177条)
  • 監護者わいせつ罪・監護者性交等罪(第179条・第180条)
  • 不同意わいせつ等致死傷罪(第181条)
  • 16歳未満の者に対する面会要求等の罪(第182条)
  • 強盗・不同意性交等罪および同致死罪(第241条第1項・第3項、第243条)

特別法に関する罪

  • 盗犯等の防止及び処分に関する法律:常習特殊強盗・不同意性交等(第4条。刑法第241条第1項の罪を犯す行為に係るものに限る)
  • 児童福祉法:児童淫行(第60条第1項)
  • 児童ポルノ法:児童買春、児童買春周旋、児童買春勧誘、児童ポルノ所持・提供等、児童買春等目的人身売買等(第4条〜第8条)。
  • 性的姿態撮影等処罰法:性的姿態等の撮影、性的影像記録の提供等・保管・送信・記録(第2条〜第6条)

都道府県の条例で定める罪

各都道府県の迷惑防止条例や青少年健全育成条例のうち、政令で定める以下の行為を罰する罪が対象です。

  • みだりに人の身体の一部に接触する行為(痴漢等)
  • 盗撮やのぞき見行為
  • みだりに卑わいな言動をする行為
  • 児童と性交し、または児童に対しわいせつな行為をする行為

改正前の法律による罪(経過措置)

法律の改正前に以下の罪で処罰された者も、現在の特定性犯罪と同様に照会対象となります。

  • 旧刑法:強制わいせつ罪、強制性交等罪、準強制わいせつ罪、準強制性交等罪、集団強姦等罪、強盗強姦罪など。
  • 旧条例:改正前に施行されていた各都道府県の迷惑防止条例等の規定。

例えるなら 「特定性犯罪の一覧」は、「子供たちに近づけてはいけない危険な行為のブラックリスト」のようなものです。単に今の法律だけでなく、過去の古い法律や、地域ごとの細かいルール(条例)までを網羅することで、子供たちの安全を守るための網の目を細かく設定しているといえます。

なぜ日本版DBSが必要なの?ガイドラインが示す3つのリスク要因

こども家庭庁のガイドラインでは、こども向け事業が性暴力の温床になりやすい背景として、以下の3つの特性を挙げています。これらは「特定性犯罪」の照会が必要とされる根拠でもあります。

  1. 支配性(力の不均衡):先生と生徒、コーチと選手など、知識や経験の差から「逆らえない関係」が生じやすいこと。
  2. 継続性(長期的な関わり):塾や習い事のように、長期間にわたって特定の大人と接することで、過度な信頼関係(グルーミング)が形成されやすいこと。
  3. 閉鎖性・密室性(周囲の目の不在):教室、更衣室、送迎バスなど、周囲から隔離された空間が発生しやすいこと。

私が実際に聞いた被害の例ではこのようなものがありました。

塾の先生と個人的にメッセージアプリでやり取りをしていた生徒。次第に先生の距離が近いことや、接触が多いこと(頭を撫でられたり、ハグされるなど)に気づくが自意識過剰なのかな、気のせいかな、と思い込む。休みの日に二人で出かけようと誘われたところさすがに不審に思い親に相談、親が塾へ報告。実際に性的被害が出ていないため塾側も対応に困り、配置転換等を検討したが、結局生徒が受験直前に塾を退会せざるを得ないことに。

この例のように3つのリスク要因がある環境下では、軽微に見える性的な問題行動が、深刻な被害に直結する恐れがあります。日本版DBSは、この「支配・継続・閉鎖」というリスクを最小化するための取り組みなのです。

日本版DBSにおける「特定性犯罪」の範囲は、改正刑法から各都道府県の条例まで幅広く設定されています。これは、こども向け事業特有の「支配性」「継続性」「閉鎖性」というリスクから、こどもたちを確実に守るための措置です。

経営者の皆様にとって、この制度は「スタッフを疑うためのもの」ではなく、「事業所の安全性を公的に証明し、信頼を勝ち取るためのもの」です。対象となる犯罪の範囲を正しく理解し、適切な社内規定の整備や運用の準備を進めましょう。

具体的な導入手順や、スタッフへの説明の仕方でお困りの際は、弁護士、社会保険労務士、行政書士へぜひご相談ください。

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