「戸籍を出したくない」と言われたら?日本版DBS導入に向けた従業員への正しい説明手順

令和8年12月の制度開始に向け、現場からは「もしベテラン職員に拒否されたら、クビにできるのか?」といった切実な声が届いています。スタッフが犯歴照会を拒否したら?戸籍の提出を拒まれたら??経営者はどのように対応すべきでしょうか。

「いきなりクビ」は非常にリスクが高く、労働紛争に発展する可能性がありますのでお勧めしません!しかし、「そのまま働かせること」は法律違反になってしまいます。

今回は、職員が前科照会を拒否した場合に経営者が取るべき正しい手順を、順を追って詳しく説明します。

目次

「放置」が経営を破綻させる?

法令で定められた期限を過ぎても犯罪事実確認が完了していない場合、その従業員にこどもと接する業務を続けさせることは、法律違反になります。子供と接しない業務への配置転換などが必須となります。

社名の公表という社会的ダメージ

義務対象の事業所(学校や保育所等)が期限までに確認を行わなかった場合、事業者名、所在地、違反内容がこども家庭庁のウェブサイトで公表されます。これは「こどもの安全を軽視している施設」というレッテルを貼られることを意味します。

認定の取り消し

学習塾などの認定事業者の場合、正当な理由なく確認を怠ることは認定取り消しの「義務的理由」に該当します。取り消されると、その後2年間は再認定を受けられません。

多額の賠償リスク

もし照会を拒否した職員が後に事件を起こした場合、事業者は「必要な確認を怠った」として、被害者から安全配慮義務違反を問われ、巨額の損害賠償を命じられる可能性が極めて高くなります。

拒否された時に踏むべき4つの法的ステップ

従業員が「戸籍を見られたくない」「プライバシーだ」と主張した場合、感情的な議論は避け、以下の法的プロセスを粛々と進めます。

①情報の「不透明さ」による不安を取り除く

多くの拒否は「自分の過去が同僚に知られるのではないか」という不安から来ます。
→「犯歴情報は、権限者のみが閲覧し、同僚には一切知らされない」といった「情報管理規程」をあらかじめ作成しスタッフへ丁寧に説明しましょう。
→国のシステムでは、犯歴がない場合は「該当なし」という結果が出るだけで、具体的な個人情報は保護される仕組みであることを説明しましょう。

②就業規則に基づいた「業務命令」

それでも拒否が続く場合は、法的な裏付けを持った指示を出します。

根拠規定の提示

就業規則に「法に基づく犯罪事実確認への協力義務」が明記されていることを示し、書面で業務命令を発出します。

書面による記録

「いつ、誰が、どのような理由で、どう説明して指示したか」の記録を必ず残します。これは万が一の裁判で、会社側の正当性を証明する証拠になります。

③対象業務からの「配置転換」

それでも拒否する場合、法令違反を避けるために「こどもと二人きりにならない業務」への異動を命じましょう。

異動の正当性

法律を守るための配置転換は、業務上の必要性が高く、権利の濫用とは認められにくい傾向にあります。

職種限定契約の注意点

ただし、契約で「保育士」「塾講師」と職種が限定されている場合、本人の同意なしに事務職へ異動させることは難易度が上がるため、専門家への相談が必要です。

④最終手段としての「懲戒処分」

業務命令に従わず、配置転換も不可能な場合、初めて懲戒処分の検討へ進めます。

就業規則に「前科照会を行うことを拒否した場合」や「戸籍の提出を拒否した場合」、「期限内に手続きしない場合」は懲戒処分の対象となると明記しておくことが大切です。

施行日までに経営者が必ず準備すべき重要事項

従業員の拒否という事態になってから動くのでは遅すぎます。今すぐ以下の体制を整えてください。

就業規則の改定

犯罪事実確認への協力義務、および不適切な行為があった場合の配置転換や懲戒の規定を盛り込み、周知します。

情報管理規程の策定

誰が情報を見るのか、どこで保管するのかを厳格に定め、従業員の安心感を担保します。

従業員の理解

既存の職員に対し、「なぜ必要なのか」「どんな手続が必要か」を就業規則の変更の周知と共に研修を行い理解を得ておくことが大切です。

田畑

日本版DBSの運用で最も怖いのは、手続きを進められず、法律違反のまま運営を続けてしまうことです。

法律が施行されてからの対応では遅すぎます。今のうちに就業規則の変更、従業員への研修と周知を行いましょう。

拒否するスタッフへの説明や、そして万が一の際の配置転換の検討など、法的なリスクを最小限に抑える体制づくりは、早め早めの準備が肝心です。顧問の弁護士、社会保険労務士がいらっしゃる場合は今すぐにご相談を。

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